ロレックスの真贋や査定ではシリアルナンバーが重要な役割をはたしているのは皆様もご存知だと思います。
このシリアルナンバーには多くの情報がありコアなロレックスファンの方はこのナンバーだけでも何時間も語れる方は多いのではないでしょうか?
今回はこのシリアルナンバーを改変した個体を買取りして僕が痛み目にあった話しをしたいと思います。
悪意ある改変・改造品を掴まされる被害を一人でも減らしたく書かせていただきます。
ロレックスのシリアルナンバーとは
この記事を読まれる方は説明不要だとは思いますが年の為簡単な説明をさせていただきます。
ロレックスの時計にはよほどのヴィンテージウォッチではない限り6時側のブレスレットを外すとシリアルナンバーが刻印されております。
このナンバーから大体の製造年数が分かる管理がなされておりました。
2010年より以前は規則性ある刻印がされておりましたが2010年以降より刻印方法はランダムとなり明確な年数は分からなくなりました。
同じモデルでもこのシリアルナンバーの年数一つで何十万~何百万も中古相場が異なります。
それだけ大切なポイントという事を理解していただき以下出来事を読んでいただけると分かりやすいと思います。
ロレックス・デイトナの持ち込みからはじまった
まだ僕が入社したばかりの話しです。
ロレックス 16520 エルプリメロ デイトナが持ち込まれました。
ご存知の方も多いと思いますが現在最も注目されているヴィンテージロレックスの一つです。
内部ムーブメントにはクロノグラフの名機ゼニス社のエルプリメロが搭載された非常に貴重な時計です。
この個体は年数によって買取価格が大きく異なります。
有名なのは年数が2000頃に作られた最終品番「P番」
このモデルは同じモデルとは異なる価格で取引きされている有名なモデルです。
その時、お持ちいただいたデイトナは付属品がなく時計のみでした。
お客様はロレックスに詳しく複数のモデルを所有されているとの事でした。
このデイトナは非常に珍しいです。
お客様から言われた時、僕は最終品番のP番かと思っておりました。
するとお客様から言われたのは1988年に製造されたR番のロレックスと言われました。

デイトナ・16520の初期モデルで最終のP番よりも貴重なモデルです。
そんなモデルの持ち込みが・・・
完全に飲み込まれてしましました。
お客様に時計のブレスレットを外す許可をいただき早速確認しました。
問題無く「R」のシリアルが入っているではありませんか!
お客様との話しは盛り上がり高価買取で成約をいただきました。
ロレックスからの思わぬ回答
これだけのレアロレックスです。
付属品が無くても高く販売出来る一品ですので慎重に販売しなくては。

そんな安易な考えで日本ロレックスに修理依頼をしました。
数日後、1本の電話が・・・
ロレックスから電話です!
店舗スタッフからの電話が僕にありました。
ここで僕は不安な気持ちが脳裏をよぎります。
ロレックスに複数修理を出している人ならご存知かもしれませんがロレックスの修理で基本的に電話がくる事はありません。
見積もりがFAXで来て回答をこちらから電話します。
先方から電話があるときは何か大きな問題がある場合のみです。
恐る恐る電話に出ると修理担当者から驚きの回答が・・・
この度は当社の製品を修理でお送りいただきありがとうございます。今回お送りいただいた時計にはシリアルナンバーを故意に改変された部分が見受けられます。よって当社では修理は出来ませんので返送させていただきます。

完全に声が上ずっていたと思います。
シリアルのアルファベット部分です。返送しますのでご確認下さい。
とても厳しい一言に聞こえました。返送されるまでは業務が手につかなかった事を覚えています。
アルファベットにされた改変
店舗にデイトナが返送されすぐに確認をしました。
やっぱりRの刻印がされており何がいけないか全く分かりません。
よく見ると違和感に気がつきました。
ポイント
「R」と表記されている右の棒だけ太さが違う。
「P」の表記に棒を足して「R」にしてあるではないですか。
今でこそP番は非常にレアなデイトナですがRに比べると販売価格は安いので更に高く売る為にシリアルナンバーを改変したんだと思いました。
厳しいロレックスの対応
この買取りで非常に落ち込みました。でもこのまま落ち込んでいても買取りしてしまったデイトナを販売する事は出来ません。
そこでロレックスに相談する事にしました。
ポイント
・シリアルを研磨でもとに戻すことは出来ないか?
・ケースを交換してシリアルを変更出来ないか?
・この件は見なかった事にしてオーバーホールをしてくれないか?
結論からいうと全て対応不可。
改造したロレックスは何があっても触らないとの事でした。
とても厳しいルールで徹底されております。
やはりロレックスは改造品についても非常に厳しい対応です。
改造されたロレックスの販路

正直、赤字で処理を行いました。
基準外の商品では無かった為、パーツを部品として欲しい業者はありました。
しかしそのまま販売するのは非常にリスクが高い為、どこも買取りは非常に安かったです。
違う買取店で売る事も考えましたが後で揉めるのも会社的にあれなので今回は赤字をとりました。
非常に高い勉強代となった事は聞かないで下さい。

現在、ロレックス社は非常に改造品の取締りを強化しております。
改造品が販売した履歴が判明すると最悪販売停止処分にもなります。とても一般のお客様に売る事は怖くて出来ませんでした。
まとめ
ロレックスの時計は人気があるので持ち込みが非常に多い高額時計です。
基準外か見分ける事も重要ですが今回のような改造された商品の持ち込みも多いです。
今回のケースは僕が勉強不足で他のパーツ部分での年数相違に気づけなかった事が大きな敗因です。
流通数も多いのでパーツの使いまわしなども多く最悪今回のような大きな失敗に繋がる事があります。
高い商品は特に細かな部分までしっかりと見て買取りが必要です。